みずのわColumn
ネット新聞「ジャーナリスト・ネット」
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神戸で硬派な本を出し続けている「みずのわ出版」。健闘しているかに見える本の刊行だが、今年は正直どうだったのか。「一地方出版社しゃちょーのぼやき」と題して出版界の現状を振り返ってもらった。
みずのわ出版の8月までの売上げベースで、今年は前年比40%減。1年かけて借金を増やしただけ、抗いようのない敗戦だった。
書店で本が売れないとか出版不況とかいわれて久しい。インターネットや携帯電話の所為にしていればハナシは簡単だろうが、それしきで説明がつくほど出版をめぐる業界の病巣は浅くはない。
確かに、読者は確実に減少に向かっている。趣味の多様化もあり出版業の縮小傾向は今後も続くだろうし、私たちはそれを甘んじて受け入れるしかない。だからこそ、減ったとはいえそれでも残る読者をつなぎ止めたい。
ここがジレンマなのだが、こんな本が出てまっせと伝えようにも、それが機能していない。取次経由で書店に流す場合、新刊ビラをまいて注文をとるのが当面の策なのだが、どの程度書店員の手に渡っているのか疑わしい。神保町のある書店では、新刊ビラが、一週間で膝の高さまで溜まると聞いた。
懇意にしている店長は「ウチは規模が小さいから、棚担当に割り振ってこまめに注文出すようにしているけど、バイト任せの大手なんか、そんなことしてまへんで。この人のこの本が出ているってこと知らん書店員は多いですよ」と云う。取次の担当さん曰く、それでも見てくれることを信じて新刊ビラを送り続けるしか方法がない、と。
それって、無人島から茫洋たる大海に向けてせっせとメッセージボトルを流し続けているようなものだろうか。
昨年の年間新刊点数およそ7万7000点。20年前約3万点だったのが、今や8万点に迫る勢いである。新刊の洪水に溺れているとしか云いようがない。その本が書店という場で、必要とする読者に届くということ自体、奇跡としか云いようがないのではないか。
確かにネット書店は優れ物だと思う。だが、目的とする書目があって、そこに着弾するためであればいいのだが、そうではない、書店をぶらぶらするような無駄とか衝動買いとか新たな発見とは縁遠い存在に思えてくる。
ただでさえ成り立ちにくい地方出版社はこれからどうすれば生き残っていけるのか。苦悩は深まるばかりだ。
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